多言語サイトを“自動翻訳だけ”で作るリスクと失敗しないためのポイント|F-standard BLOG

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多言語サイトを“自動翻訳だけ”で作るリスクと失敗しないためのポイント

海外からの問い合わせや採用強化、ECの海外販売など、中小企業でも海外に向けて情報発信をする「多言語サイト」が必要になる場面が増えてきました。
そして、多くの企業が考えることが「このAIが進化する時代で、自動翻訳だけで翻訳ができないか?」という発想です。

自動翻訳を実施するために、制作会社に相談をしたり、少し知識のある人だと、ホームページにプラグインを入れるだけでサイトが英語化される方法を選択する会社も多く見かけます。
しかし、実はこのやり方には気づきにくい落とし穴が存在します。

この記事では、自動翻訳に頼りすぎて起こるリスクと、失敗しないためのポイントを分かりやすく解説します。

目次

なぜ中小企業は「自動翻訳だけの多言語化」を求めてしまうのか?

多言語サイトを検討する中で、中小企業が「自動翻訳だけで良いのでは?」と考えてしまうにはいくつかの理由があります。

①低コストで始められると思ってしまう

多言語化を検討する際、まず気になるのが「コスト」です。
外注すると翻訳1言語だけで数十万円かかる場合もあり、ランニング費用が発生するケースもあります。
そのため、

  • とりあえず自動翻訳で様子を見たい
  • 最小限の費用で一度形にしたい
  • 英語版は“掲載しているだけ”でも良いのでは

という流れになりやすいのが実情です。

「とりあえず自動翻訳で作れば、安く簡単に英語版ができるはず」
そういった考えで採用されやすく、結果として必要な部分に十分な手当がされないままサイトを公開してしまうケースが非常に多いのです。

②プラグインで“簡単にできる”ように見える

WordPressの自動翻訳系プラグインは、数クリックでページが自動的に英語化されるため、一見「これだけで多言語サイトが完成する」と錯覚しやすくなります。
トップページの文字が切り替わると、見た目だけは多言語化が成立しているように見えるため、担当者は“作業の難易度が低い”と感じがちです。
しかし実際には、URL構造が適切に作られていないケースが多く、SEOがまったく機能していない多言語サイトもよく見かけます。
その結果、海外から検索されにくい状態になり、海外ユーザーに届きにくいサイトとなってしまいます。
このギャップこそが、「簡単に見えるのに、実は運用が難しい」と言われる最大の理由です。

③「見た目だけ完成」ができ、本質的な難しさが見えにくい

ホームページが自動翻訳されると、「多言語サイトが完成したようにみえる」ことが最大の誤解です。
実際は、

  • URL構造
  • SEO
  • 翻訳の表現
  • UI/UX
  • 海外からの読み込み速度

といった目に見えない部分の方がむしろ重要です。

表面的に英語化されていても、構造設計や内部対策が整っていないと、海外ユーザーに情報が届かず、成果につながらない状態が続いてしまいます。

自動翻訳だけに頼ることの主要なリスク4つ

①誤訳による信頼低下(会社情報・法的表現・専門用語・固有名詞)

自動翻訳は日常会話レベルであれば優秀ですが、会社説明・製品説明・法律的な表現などは誤訳が頻発します。

誤訳で会社名やサービス内容が違って伝わると、「この会社は細部に配慮がない」と信用を失う可能性があります。

②英語などの外国語ページが“正しくインデックスされない”可能性(URL構造・hreflangの問題)

多言語サイトは、適切なURL構造(/en、/fr、など)とhreflang設定が必須です。

これが正しく設定されていないと、英語ページがGoogleやBing等の検索エンジンに認識されず、検索結果に出ないという状態になります。

結果として、海外ユーザーに向けて発信しているはずが、実際には見てもらえない意味のないホームページになるという問題が起こります。

③海外ユーザーの利用意図とズレた表現による成約機会損失

自動翻訳は文法的に正しくても、「伝えたいニュアンス」までは理解してくれません。
また、専門的な言語や、固有名詞、方言等自動翻訳が解釈しづらい文章があると、正しく翻訳されていないことがあります。
そのため、

  • 商品の魅力が伝わらない
  • サービスの価値が誤って伝わる
  • 海外の購買行動とズレた説明になる

などの“もったいない機会損失”が発生します。

③海外からアクセスした時に“読み込みが遅くなる”問題

日本のサーバーに置いたサイトは、物理的に距離が遠い海外のユーザーほど読み込みが遅くなるという問題があります。
特に、

  • 写真が多いサイト
  • 日本国内向けに作られたままのサイト
  • CDN(世界中にデータを分散する仕組み)を使っていないサイト

などは、英語ページがあっても「読み込みが遅い」というだけでユーザーが離れてしまいます。
多言語化とは“翻訳すること”だけではなく、海外からの閲覧環境を前提にした準備も必要になる、という点が見落とされがちです。

それでも自動翻訳を使うなら、失敗しないためのポイント

自動翻訳を使ってはいけないわけではありません。
むしろ、適切な構造設計とルールを整えれば、中小企業にとって非常に有効な選択肢になり得ます。
重要なのは、“自動翻訳に任せてはいけない部分”と“任せても良い部分”の線引きを理解し、サイトが破綻しないための最低限の仕組みを整えることです。

ここでは、自動翻訳を利用しつつも、失敗しないために押さえておくべきポイントを紹介します。

①言語別URL(/en、/zh、など)とhreflangを正しく設定する

多言語サイトにおいて、URL構造と言語タグ(hreflang)は最重要項目です。
先程も記述があったように、「英語に翻訳されたページを用意しただけ」では、Googleなどの検索エンジンはそれを海外向けページとして認識してくれません。
自動翻訳プラグインを使う場合でも、/ja、/en、/zhのように明確なURL区分を作れる設定を選び、hreflangを確実に出力できるプラグイン・有料プランを利用するのが必須です。

②問い合わせフォームの多言語化は慎重に判断する

問い合わせフォームは、自動翻訳との相性が特に悪い部分です。
まず知っておいてほしいのは、ブラウザの自動翻訳によってフォームがうまく動かなくなる可能性があるということです。
訪問したユーザーは、フォームが動いていないと、「この会社、問い合わせできない…」と離脱してしまうほか、会社の信用にも関わる話になります。

また別の問題として、フォームを英語対応にすると、社内で対応できない問い合わせが届くということがあります。
対応が遅れてしまったり、返信できないと、結果としてユーザーに不信感を与えることにもつながります。

そのため、もし英語の問い合わせ対応が難しい場合は、あえて英語ページからフォームを非表示にする、「英語でのお問い合わせはメールへお願いします」と案内するなど、運用に合わせた設計にしたほうが安全です。

社内だけでは難しい部分 ─ 専門家に任せるべき領域

自動翻訳プラグインを使って多言語化を始める場合でも、「ここだけは社内だけでやるのは難しい」という部分が必ず存在します。
また、本格的に海外向けのサイトを運用するとなると、自動翻訳では補いきれない領域が出てくるため、人による翻訳・多言語実装が必要になるケースも多くあります。
ここでは、その境界線をわかりやすく紹介します。

①自動翻訳プラグインの設定・最適化(特に有料プラン)

有料の自動翻訳プラグインは、多言語サイトの土台となる「構造設定」が非常に重要です。

  • 言語別URLの設定
  • hreflang出力が正しくできているか
  • メニュー・ウィジェットの言語切り替え
  • ページテンプレートごとの翻訳管理
  • プラグインのアップデート対策(バグ回避・事前テスト)

これらは設定項目が多く、1つ間違えるだけで英語ページが検索に出ないといった状態になりかねません。
“自動翻訳を使うから簡単”というわけではなく、自動翻訳を安全に使うために、専門家の初期設定が必要だと考えてください。

②SEO構造・URL設計(最も事故が起きやすい領域)

多言語SEOは、通常のSEOよりも複雑です。

  • 日本語と英語のページの関係性を正しくGoogleに伝える
  • 各言語のURLをどう整理するか
  • 国別の検索エンジンの違い(GoogleとBaiduなど)を考慮する

これらを間違えると、せっかく英語ページを作っても海外検索でほぼ表示されないままになります。
多言語サイトで最もトラブルが多い領域です。

③自動翻訳では伝わらない部分の文章監修(必要に応じて人の翻訳)

自動翻訳は便利ですが、製品紹介・ブランド紹介・会社理念といった“伝えたい部分”は、人の手で整えた方がいいケースが多くあります。
例えば、

  • 専門用語が正しく訳されない
  • ニュアンスがズレて会社の印象が変わる
  • 文章が“正しいのに伝わらない”状態になる

など、翻訳特有の落とし穴があります。
そのため、「自動翻訳+人間による最終チェック」という組み合わせが最も安全です。

④UI/UXの調整(国によって見やすさが違う)

実は、英語圏・アジア圏では“見やすいデザイン”が大きく異なります。

  • ボタンの位置や大きさ
  • フォントや文字間の調整
  • スマホでの見え方
  • 英語表記にした途端、文字が長くなって崩れる

など、翻訳するだけでは解決できない問題が出てきます。
海外ユーザーが使いやすい導線を作るには、UI/UXの知識が必要です。

⑤海外からのアクセス速度の最適化(CDNの設定)

多言語サイトは「海外ユーザーが快適に見れること」が前提になります。

  • 日本のサーバーのままだと読み込みが遅い
  • 国によって速度差が大きい
  • 画像や動画の読み込みで離脱が起きる

こうした問題を改善するには、CDN(海外にデータを置く仕組み)の設定が必要になります。
自動翻訳プラグインだけでは解決できない領域です。

まとめ:自動翻訳は“正しく使う”と強い。しかし運用を間違えると大きなリスクに。

自動翻訳は「使ってはいけないもの」ではありません。
正しく使えば、低コストで多言語対応を始められる非常に強力な方法になります。

しかし、その一方で、中小企業が見落としやすいリスクが多くあるのも事実です。
とくに、URL構造・SEO・フォーム・海外からの読み込み速度など、“画面では分からない部分”が原因でトラブルになるケースが少なくありません。

多言語サイトには、社内で対応できる部分と、外部の専門家の力が必要な部分が明確に存在します。
その線引きを誤ってしまうと、時間・コスト・信頼の面で大きなロスにつながる可能性があります。

小さく始める場合でも、まずは「どこを自動翻訳に任せてよいのか」を正しく理解し、最低限の運用ルールを決めておくことが大切です。
そして、海外向けに本格的な集客や問い合わせを期待するのであれば、最初から専門家に相談して進めることで、結果的にムダを減らし、安定した運用につながります。

“自動翻訳で全てをまかなう”のではなく、どこまでを任せ、どこからを専門家に依頼するかその判断こそが、多言語サイトを成功させる大きなポイントです。

この記事を書いたスタッフ

林 恭平

担当:営業/ディレクション/経理/Webプログラミング/バックエンド/セキュリティ/サーバ保守

F-standard代表取締役。
元財務コンサルタントで財務系アプリ開発者。税理士の父を持つ。そのため「数字のために生まれてきた漢♪」と呼ばれている。また、顧客のことを親身になって考える若手経営者。
会社も9期目に入り、少数精鋭のメンバーが揃ったので、行くぜ!!と気合が入っている。

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